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矢野真紀



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矢野真紀

夢を見ていた金魚

お祭りでとれる金魚は弱いから
すぐ死んじゃうって誰か言ってた
今朝も一匹水面に浮いた 泣きながらそっと手の平にのせた

大事にしてた 名前も付けたのに何故かしら?金魚缽のぞくの怖かった
この部屋に私以外の命の氣配をただ少し增やしたかっただけよ

一度も接吻する事は無かった
赤くて無力なあの子の唇

初めて買った金魚缽
お祭りでとれる金魚は弱いから
すぐ死んじゃうって誰か言ってた
今朝も一匹水面に浮いた 泣きながらそっと手の平にのせた

やけに涼しい 夕燒けによく似た悲しい色が獨りの午後に滲んだ
この部屋にさげすんだ空氣だけを殘して空っぽの缽は私を笑う

何度も接吻しておけばよかった
あまりに非力な私の唇

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きっと私が夢を見てたの
それはまだ見ぬ滿ち足リた世界
考えてはじっと胸を焦がしてた
初めて買った金魚缽
お祭りでとれる金魚は弱いから
すぐ死んじゃうって誰か言ってた
今朝も一匹水面に浮いた 泣きながらそっと手の平にのせ

私に殘された最後の夏も靜かに手を振った
あなたと過ごした最初の夏が靜かに息を止めた

おわり作夢的金魚


初めて買った金魚缽


初めて買った金魚缽